※この物語はフィクションであり、

現実に存在する人物、団体、

出来事とは一切関係ありません。

 

 

 

 

連続ゴルフ短編小説

 

 

 

- Over The Green -

 

 

 

 

(第4話)

 

 

 

ー自信の所在ー

 

 

 

 

 

 

 

 

結果から言うと、

大学入学共通テスト(旧:センター試験)は

 

大失敗だった。

 

 

 

 

熱のせいで、できるはずの問題でミスをして、

 

そこで焦ってパニックになってしまい、

 

時間が足りなくなって、

 

ほとんど実力が出せなかった。

 

 

 

他の科目も、前の試験の失敗を引きずってしまって、

 

もう、どうでもいいや…と思えてしまった。

 

 

 

 

 

 

週明けの、月曜日…

 

ぼくは初めてみどりとの

朝の《ルーティーン》を破った。

 

 

 

なんとなく、みどりと会いたくなかったからだ。

 

 

 

 

 

 

 

授業が始まり、

 

本当の志望校を決めるために

 

各科目の試験を解答を見ながら

一斉に自己採点をし始めた。

 

 

 

 

 

 

それぞれの試験の結果は、

 

言葉にしなくても

 

教室の雰囲気で伝わってきた。

 

 

 

 

試験がうまくいかなかったものは、

 

ぼくと同じように暗い表情をしているし、

 

 

 

 

ボーダーラインを超える得点を無事にとれたものも、

 

他のものに気を遣っているのか、

 

あからさまに浮かれている感じはない。

 

 

 

 

 

 

その日のぼくは、

 

みどりとほとんど会話することなく家に帰った。

 

 

 

 

 

家に帰ると、

 

母には

 

「終わったものは仕方ないから、

行けるところに行ったら?」

 

と言われたが、

 

 

 

父には

 

「試験当日に病気になるような奴は、気持ちがたるんでる!

 

お前はやっぱり何をしてもダメだな!」

 

 

 

 

 

…そんなこと言われなくてもぼくが一番わかっている。

 

親父はいつもぼくのことなんてわかってくれない

 

 

 

 

 

 

 

バタン!とドアを閉めて、部屋に入った。

 

悔しいけれど、親父の言う通りだ。

 

 

 

 

ちょうどそのとき、

 

机に置いておいた携帯が鳴った。

 

 

 

ー メッセージだ! ー

 

 

 

 

みどり

「壱田くん、元気になった?」

 

 

既読をつけずに、メッセージの最初だけ読んだ。

 

 

 

 

 

 

少しだけそのままにしておくと、

 

またメッセージが来た音が鳴る。

 

 

 

みどり

「明日から、また一緒に朝から頑張ろうね!」

 

 

 

 

 

気づかないふりして、無視して寝ようと思った。

 

 

 

 

でも、どうにも眠れず、

結局、みどりに返信した。

 

 

 

 

 

「浮島さん、ありがとう。

 

でも、明日から自分なりのペースで頑張るので、

 

朝早く学校行くのは、もうやめます。

 

浮島さんは試験頑張ってね」

 

 

 

 

ぼくがみどりの勉強の足を引っ張ってはいけない。

 

 

 

 

 

そういえば、よく考えてみると、

 

ぼくは勉強に限らず、

 

サッカーでも大事な場面でミスしてばかりだった。

 

 

 

 

 

ちょっと上手くいったと思うと、

 

「絶対にミスしないように」と考え出してしまって

 

途端に緊張して、実力が出せなくなるのだ。

 

練習しても、どうせうまくならない。

 

 

 

 

 

 

 

サッカー部のキャプテンだったタケシはいつも

 

「めいと、自信持ってやれば、絶対できるんだから、もっと自信持てよ!」

 

そうは言われても、

 

その自信がどこにもないのだから、困ったものだ。

 

 

 

 

 

 

誰か、ぼくに教えて欲しい。

 

 

 

 

 

一体、実力ってなんだ?

 

一体、自信ってなんだ?

 

ぼくは何ができるんだ?

 

 

 

 

 

 

考えてもしょうがないことばかりが、

 

頭の中をぐるぐる回り始めて、

 

勉強にも集中できない。

 

 

 

 

勉強や運動ができる奴ってのは、

 

きっとロボットやマシーンのように、

 

無機質で、集中力のある奴なんだろう、

 

決して、自分とは違うんだ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

みどりは当初の予定通りの志望校に願書を提出したらしい。

 

 

 

ぼくは「滑り止めの滑り止め」に願書を提出することにした。

 

 

あぁ、こんなことならもっと適当に勉強しておけばよかった。

 

 

 

 

 

 

そんな感じで気がぬけたまま過ごしていたら、

 

 

あっという間に、1月が過ぎ、

 

2月が終わり

 

ぼくらは3月1日の高校の卒業式を迎えた。

 

 

 

 

 

 

 

(第5話へつづく)