※この物語はフィクションであり、

現実に存在する人物、団体、

出来事とは一切関係ありません。

 

 

 

 

連続ゴルフ短編小説

 

 

 

- Over The Green -

 

 

 

 

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⭐️主な登場人物⭐️

 

 

⭐️ぼく  

(壱田 めいと)・・・

 

29歳。某社の営業社員。

ゴルフは1年前に始めたが、今のところスコア150を切れる気配が全くない。

ややコミュ障気味。高校時代サッカー部(Bチームの補欠)

 

 

⭐️みどり

(浮島 みどり)・・・

 

「めいと」の高校時代の同級生。ベストスコア67。

ジュニア時代にはゴルフでかなりの成績を残す。

父の会社を継ぐためにアメリカから久しぶりに日本に戻ってきた。

 

 

 

⭐️タケシ 

(深草 たけし)・・・

 

同じく高校時代の同級生。ゴルフ歴5年。ベストスコア78。

「めいと」の取引先のマツイスマトモ商事の若手マネージャー職。

激務の中、器用にゴルフもこなす。

高校時代はサッカー部のキャプテン(ポジションは右ボランチ) 

 

 

 

⭐️カイダさん・・・

 

40〜50歳くらい。駅前の小スペースのゴルフクリニックのオーナー。

たまに店に顔を出すが、基本的に日本にほとんどいない。

全米女子(オープン…だか何だか)に出場するような選手を

サポートしているらしいが、全てが謎の人。

 

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(第1話)

 

 

 

ー 冬 ー

 

 

 

 

 

「おまえって、さぁ・・・本当、名前負けしてるよな。

 

さっさと打てよ。

 

もう、前の組全然いないぞ」

 

 

 

 

そう、タケシが急かす。

 

 

 

14番ホールのティーショットが

 

「他の皆の予想を裏切ることなく」

 

120ヤードほど飛んで、右サイドの山の中腹にひっかかった。

 

 

 

ぼくは焦っていた。

 

 

 

タケシ

「下手くそなんだからさ、素振りなんてしても意味ないから

 

早くしろよ!」

 

 

 

それは、十分すぎるほどによくわかっていた。

 

 

 

しかし、その意に反して

 

打てども、打てども前に進まない。

 

 

確か、ゴルフのレッスン雑誌には、

 

「つま先あがりの傾斜は、

右利きの場合はフックして左に飛ぶので、

目標よりもやや少し右を狙いましょう」

 

と書いてあったと思う。

 

 

 

 

 

 

しかしだ…

 

ぼくが打つとボールは山のより「頂点」へ向かって飛んでいく。

 

 

 

右を向いたら、右を向いた分だけ

 

そのまま、右の山めがけてさらにボールが駆け上がっていくのだ。

 

物理法則なんて本当にあるのか?

 

 

 

 

 

もしも人生が、常に頂点に向かって行くなら、

 

それはさぞかし素晴らしいことだが・・・

 

ゴルフの場合は全く笑えない。

 

 

そもそも人の3倍移動するので疲れる。

 

 

 

誰だ、ゴルフはカートに乗れるから、

「一番楽なスポーツ」だって教えた奴は。(大嘘つきだな!)

 

さっきから、フェアウェイではなく、

山登りとボール探ししかしていない。

 

 

 

 

ようやく見つけたボールのある地点まで、山を這い上がる。

 

 

こんな不安定なところから当たる気なんて全くしない。

 

 

 

ぼく

「今から打つので、気をつけてくださーい!」

 

 

 

山の頂上付近から下にいるタケシや同じ組の皆さんに声を掛ける。

 

他の3人はもうグリーンに乗っているようだ。

 

 

下から、じっと見つめられている気がする。

 

 

呼吸を整え、スイングすると、

 

 

「ポコっ」と情けない音を立てて、

 

ボールはさらに右の白いOB杭を越えていった…

 

 

 

タケシ

「お前このホール3倍の12でギプアップでいいからな」

 

 

 

悔しい。けれど、ホッとした。

 

 

タケシと知り合ってもう、12年経つ。

 

あいつには何も勝てたことがない。

 

 

 

何もかもだ。

 

 

 

 

3ヶ月前の秋晴れの日のことだ。

 

ぼくの会社の業者さんとのコンペに

 

取引先の人間として、

 

うちの担当をしているタケシも参加した。

 

 

 

同じ高校のよしみ(実は同じサッカー部)ということで、

 

この日、初めてタケシと同じ組で一緒にラウンドすることになった。

 

 

知り合いがゆえの口撃は

 

スタート前から一切容赦なかった。

 

 

 

うちの会社と関連業者さんたちとの

 

10組コンペの朝の自己紹介の時に、

 

タケシが皆の前で

 

 

「壱田くんは、高校時代からの友人で、あだ名は『ティーショット』です。」

 

 

とまぁ完全に余計なことを言いやがった…

 

 

 

 

 

 

 

ぼくの名前「いちだ めいと」は、

 

 

漢字で書くと『壱田 名人』

 

 

 

 

 

つまり、いちだ名人ということで、

 

 

 

 

 

高校時代のサッカー部の奴らには

 

「ティーショット」と呼ばれていた

 

 

(ちなみに、武藤君のあだ名は「ノンシュガー」だった。

 

同様に、佐藤君は「シュガー」だ。)

 

 

 

高校生のノリなんて、きっと大体そんなもんだと思う。

 

 

 

 

 

そうしたら、ぼくの会社の部長が

 

「なるほど、それなら、始球式は壱田にやらせましょう」

 

と言ってきた…

 

 

 

当然、何も聞かされていない。

 

いつもの部長の無茶振りってやつだ。

 

ぼくは体育会系のノリってやつがどうも苦手だ。

 

 

(ちなみに部長はぼくの営業成績の悪さにいつも嫌味ばかりいう)

 

 

 

 

 

 

そして、始球式本番。

 

 

ぼくがおそるおそる打ったボールは、真上に飛んで、右の林を越えていった。

 

 

 

ひどいテンプラで、まだ新しいドライバー(練習場で使っていない)の

 

ヘッドに「白い傷跡(ミスショットによる打球痕)」がくっきり残ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

部長は大きな声で

 

「さぁ、壱田くんのおかげで、みなさんだいぶ緊張もほぐれましたね!」

 

 

 

ぼくは、ハハハ…どうもという感じで

 

ドライバーの犠牲を払い、

 

精一杯の愛想を振りまくも、

 

その傷跡をじっと見つめて、

 

小さくため息を吐いた。

 

 

 

 

なんで、休日にこんな目に合わないといけないんだ…

 

 

 

 

スタートする前から憂鬱で嫌な気分だった。

 

 

そして、プレー中はもっとひどかった。

 

 

 

 

コンペの結果は、

 

 

ダブルペリア方式によって決定された。

(※ハンディがその日のスコアに応じて振り分けられる)

 

 

部長が95で優勝

 

タケシが83で2位だった。

 

この方式だと、一番少ない数でプレーした人が必ずしも優勝になるわけではない。

 

 

 

ちなみにベスグロ賞も

(ハンディをひく前の元々の数字が一番良い人:ベストグロス)

 

 

タケシだった。

 

 

 

 

スコアカードの集計をする際に、

 

タケシは集計係の人の耳元になにやらボソボソささやいていたから、

 

きっと、部長が優勝するように

 

うまく仕組んだに違いない。

 

 

部長はバカみたいにご機嫌だった。

 

 

 

 

 

ところで、ぼくのスコアは…

 

 

 

 

 

 

本当はあまり言いたくないところだが、

 

 

167だった。

 

 

 

 

なんと、タケシのスコアの2倍よりもまだ多かった。

 

 

 

 

当然、ダブルペリア方式だろうが関係なく

 

「圧倒的最下位」だった。

 

 

 

 

 

コンペのパーティーが終わり、

 

各々が商品を手に持ちながら、

 

 

クラブハウスの2階から降りる階段のところで、

 

タケシが背後から突然、声をかけてきた。

 

 

 

 

タケシ

「めいと、今日はありがとうな。

 

おかげでこちらは良い雰囲気でおたくの会社とゴルフができたわ」

 

 

ぼく

「はぁ、どこがだ」(タケシの性格は昔から変わらない)

 

 

タケシ

「でも、お前さぁ。もうちょっと練習しないとやばいよ。

コミュニケーションも他の人たちと全く取れてないし。

プレー中もずっとブスーっとした顔しやがって

 

 

ぼく

「しかたないだろ、お前と違って、こっちは倍の数打ってるんだから!」

 

 

タケシ

「スコアの問題というよりかさぁ、お前、カート乗ってる時も、他の人と全然話さないじゃん。社会人だろ!

だから、仕事もうまくいかないんじゃないの!」

 

 

ぼく

「うぅぅ、確かにそうだけど(コミュ障だけど)。

なんか迷惑かけてる気がするんだよね」

 

 

 

タケシ

「お前ゴルフだから、まだゲームに参加できているけど、サッカーなら完全にベンチ外だな!」

 

「やればできるんだからさぁ、もっと自信持てよ!」

 

 

 

昔から、タケシには全く同じことを

言われていた気がする。

 

 

 

 

 

そう、僕らは、高校時代に同じチームだった。

 

といっても、タケシは2年からレギュラーで、

 

3年生の時は、右のボランチであり、キャプテンだった。

 

 

 

 

 

一方、ぼくは3年間、自分なりに頑張ったけど、

 

Bチームの補欠になるのが精一杯だった。

 

同じ学年で、公式戦出場ゼロなのは、

 

3年間やってきてぼくだけ・・・

 

 

 

 

 

やっぱり、サッカーもゴルフも

 

「才能」ってやつが問題なのかもしれない。

 

 

秋の夕暮れは早い。そとはもう真っ暗だった。

 

何も面白くない休日があっという間に終わった。

 

明日から、営業の仕事に戻るのも、ただ憂鬱でしかない…

 

 

 

ゴルフ場の清算を終え、

キャディバックを玄関で

 

車のトランクへ積み込み

 

一刻も立ち去ろうとしたその瞬間…

 

 

またしても、タケシが声を掛けてきた。

 

 

 

タケシ

「めいと、お前、絶対ゴルフ練習しとけよな!」

 

 

ぼく

「嫌だよ。むしろ、今日でやめたいくらいだよ」

 

 

 

タケシ

「いいから話を最後まで聞け!

 

今度、日本にみどりが帰ってくるってよ。

 

3人でゴルフ行こうっていってたぞ!

 

まぁ、いいや。お前行かないなら、2人で行くからな!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

え、みどり…さんが...

 

 

帰ってくる…

 

 

 

一気に高校時代の記憶が蘇った。

 

 

 

 

 

 

(第2話へ続く)